自称・悪役令嬢の華麗なる王宮物語-仁義なき婚約破棄が目標です-

セシリアも同じ気持ちである。

密輸船を見逃すことに罪悪感を覚えても、今は自分たちのことで手一杯。

父に駆け落ちを知られたら、すぐに追っ手が来るに違いないから、今夜のうちにできるだけ遠くまで逃げなければならないのだ。


ふたりが覗いていて岩場から離れようとした、その時……。

海風に乗って女性の泣き声が聞こえてきた。

顔の向きを密輸船の方へ戻したふたりは、同時に目を見開く。

縄で繋がれた若い娘五人が、桟橋のような板の上を一列になって歩かされているのだ。

泣き声は彼女たちのもので、「うるせぇ! 黙って乗り込め。海に突き落とすぞ!」と怒鳴りつける悪党の声も聞こえてきた。


荷下ろしを終えた船に、乗せられようとしている娘たちを見て、セシリアは震える声でクロードに問いかける。


「あれは、どういうことですか……?」

「若い娘が五人か。おそらくはーー」


クロードが怒りを押し殺したような低い声で説明してくれる。

それによると、先月から町娘の失踪事件が相次いでいるそうだ。

買い物や友人の家に出かけた娘たちが帰宅しないと親たちが訴え、王城の兵士が調査に乗り出したところ、失踪した娘のひとりが、人相の悪い男に声をかけられているのを見たという目撃者が現れた。