自称・悪役令嬢の華麗なる王宮物語-仁義なき婚約破棄が目標です-

「クロードさん、わたくし、船旅は初めてなんです。ワクワクしてーー」

それは、「しっ!」という鋭い声で遮られ、突然、彼に抱き寄せられた。

腰に腕を回され、頬をその胸に押し当てられても、甘い展開にはならないようだ。

驚くセシリアの耳元に、緊張を孕んだ声が聞こえる。


「向こうの岩場にランプの明かりが見えた。人の気配もする」


まさか駆け落ちに気づかれ、早くも城から追っ手が来たのかと危惧したセシリアであったが、それを小声で尋ねれば、「違う」と否定された。

険しく顔をしかめたクロードが、海と暗い岩場に目を凝らす。


「船影も見えるな。あれは、商船か……」


この辺りの海岸線は直線ではなく、デコボコと入り組んでいる。

セシリアたちが立っている場所の右手は、崖が海に向けてやや突出しており、その向こうに小型の商船らしき船体が、わずかに確認できた。

クロードの言うように、ランプの明かりもチラチラと点のように見えている。

ここからの距離はおそらく、二十メートルほどであろう。


ふたりは慎重に崖伝いに歩いて十メートルほど近づくと、岩場の陰から怪しげな船を覗いてみる。

すると……。