自称・悪役令嬢の華麗なる王宮物語-仁義なき婚約破棄が目標です-

ランプの灯る玄関ポーチでは、イザベルと公爵家の執事が待っていてくれて、馬を降りたふたりに駆け寄った。

「イザベル、協力してくれてありがとう」とお礼を述べたセシリアを、イザベルは強く抱きしめる。


「最近のセシリアには、驚かされてばかりだわ」

「ごめんなさい……」

「いいえ、謝らないで。あなたの勇気と行動力に感動しているのよ」


貴族の娘として生まれたからには、家のために結婚するのが当たり前だと思い育ってきたのだと、イザベルは話す。

彼女はオペラ役者のトワルに想いを寄せているが、彼との結婚を夢見たことはなかった。

それは最初から諦めているからである。

その気持ちが今、変わろうとしているらしい。


「実はね、トワルから何度もオペラの招待を受けているの。他の劇団の公演よ。一緒に鑑賞したいって……」


イザベルは、頬を染めてそう話した。


「すごいわ、イザベル! それってデートの申し込みよね。きっとトワルさんも、あなたを好きになったのよ」


セシリアが満面の笑みで喜べば、イザベルもはにかむように微笑んで頷いた。


「だからね、セシリアに感謝しているの。駆け落ちには驚いたけれど、勇気を見せられて、わたくしも諦めずにお父様にお願いしてみようと思ったのよ。トワルをドラノワ家の婿に迎える話を。最初から諦めていては、なにも変えられないわよね」