自称・悪役令嬢の華麗なる王宮物語-仁義なき婚約破棄が目標です-

彼は国外に出ようと考えていることは話してくれたが、最終目的地はセシリアにもまだ教えてくれなかった。


ふたりを乗せた馬は丘を下り、王都のメインストリートから民家の建ち並ぶ横道に入る。

家々の窓辺に明かりはなく、静かで、街の民は皆、寝静まっているのだと思われた。

人気のない道端で、セシリアはやっと麻袋から出してもらえた。


「大丈夫か?」

「はい」


それだけの会話で、すぐにふたりは馬に乗り直した。

王城を脱出したといっても、喜び合っている暇はない。

朝が来る前に、王都からできるだけ遠くまで離れたいと思っているからだ。


クロードは手綱を持った両腕の間に、セシリアを抱えるようして、馬を走らせている。

横座りでは姿勢を保つのが難しく、セシリアはクロードの胴に両腕を回してしがみついていた。


(こんなの初めての体験よ。馬の背は揺れるのね。ちょっと怖いわ……)


するとクスリと笑う声が、彼女の耳元で聞こえる。


「決して落とさないから、安心していい。だが、腕は離さないで。セシリアに抱きつかれているのが、嬉しいんだ」

「ク、クロードさん……」


セシリアの頬は熱くなる。

冗談とも本気とも取れる言い方をした彼は、馬の速度を上げ、それから間もなく、ドラノワ公爵邸に到着した。