自称・悪役令嬢の華麗なる王宮物語-仁義なき婚約破棄が目標です-

(ク、クロードさん……!?)


恋愛に不慣れなセシリアなので、どうしても体に力が入ってしまう。

今まで頭に描くだけであった願望が、突然、いっぺんに叶えられたような気分で、心の中は大忙しだ。


(とっても嬉しいけど、どんな反応をしていいのかわからないわ。こういうことは少しずつ教えてくれないと、ドキドキしすぎて、心臓が壊れてしまいそうよ……)


今にも倒れそうなほどにのぼせるセシリアであったが、舞い上がってばかりもいられない。

クロードが強引なまでに愛情を言動で示したのは、王女にも決意を促すという目論見があってのことのようだ。

彼はセシリアを強く抱きしめると、耳元で低く囁いた。


「セシリア様、私と一緒に逃げてください」

「そ、それだと、クロードさんのお命が……」

「捕らえられたら、の話です。私は決して捕まりません。セシリア様をこの手で幸せにしたいのです。ただし、無理強いはしません。あなたも王女の地位を捨てるという覚悟が必要ですから」


その覚悟とは、これまでのような贅沢な暮らしを捨て、素性を隠しながら慎ましやかに生きるという決意のことだろう。

カナール王国へ嫁げば、王太子妃として、何不自由ない生活が約束されるが、クロードと逃げるのならば、もしかすると食べるのにも困る暮らしが待ち受けているかもしれないのだ。

どんな愛していても、セシリアにその覚悟がなければ、駆け落ちという選択をさせられないと、クロードは諭すように話していた。