「三つ目の人助けについてでしょうか? 困りましたね。聞かなかったことにしちゃいます……?」

「そんなわけにはいかないわよ。今、ターゲットを探しているところだと説明して、時間がかかって申し訳ありませんと謝るわ。それ以上、困ることを言われなければいいけれど……」


不安を隠せず、瞳を揺らしてしまったセシリアだが、長椅子から立ち上がり、ドアへ向かう。

侍女たちに見送られ、西棟の二階を目指して廊下を進み、階段に差し掛かった。


秋が始まれば日は短くなり、夕暮れからは少々肌寒い。

階段の高い位置に設けられた明かり取りの窓からは、ほんのりと橙に色付いた光が差し込んでいる。

セシリアが着ているのは、秋らしいイチョウの葉色をしたデイドレス。

そのスカートをつまむようにして、重たい足取りで階段を降りていた。


執務室のドア前に着けば、緊張が一段階、増してしまう。


(お父様の前だと、上手く話せない時があるのよね。今日は大丈夫かしら……)


深呼吸してできるだけ心を落ち着かせてから、重厚な執務室のドアを控えめにノックした。