台詞とはいえ、憧れの男性からのプロポーズの言葉は、イザベルの胸を震わせたことだろう。

歌が上手だと褒められて新たな自分の魅力に気づき、王女と比較され続けて劣等感に蝕まれていた心に、清々しい自信が戻ってきたのではないだろうか。

今日は、これまでの人生で一番喜びに溢れた日であったと、イザベルははしゃいでいる。


それに対してセシリアは、眉尻を下げるばかり。


「あのね、わたくし、仕返ししようと思ってたのよ。イザベルに恥をかかせようと悪いことを考えていたの……」


こんなはずじゃなかったと戸惑うセシリアが正直に話しても、イザベルの喜び方は変わらない。


「あなたの仕返しは、雪のように真っ白ね。意地悪しようとしたのは本当かもしれないけど、無理よ。だってセシリアだもの。あなたは心が清らかで美しいのよ。それが行動の結果にも表れるものなんじゃないかしら」


明るく無邪気な笑い声をあげたイザベルは、両腕を広げると、親愛の情を込めてセシリアをぎゅっと抱きしめた。