自称・悪役令嬢の華麗なる王宮物語-仁義なき婚約破棄が目標です-

トワルはよく響く艶めいた声で、イザベルへの愛を、観客席に向けて語る。


「戦場へ赴く私を、心から心配してくれていたのは、妻ではなくあなただった。死を目前にするまで、それに気づかぬとは、私は愚かな男です。だが、手遅れではないはずだ。これからはあなたと人生を歩みたい。イザベル嬢、どうか私の妻になってください!」


固まったように動けないイザベルに、後ろから身を屈めて近づいたセシリアが、こっそりと声をかける。


「イザベル、『はい』と返事をして。あなたが承諾しないと、オペラが止まってしまうわ」


セシリアに促されてハッとしたイザベルが、「は、はい!」と裏返りそうな声で返事をした。

それを合図に、オーケストラがロマンチックな曲を奏で始め、トワルはイザベルの耳に口を寄せて、囁くように指示をする。


「ワンフレーズずつ、僕が歌いますので、その後に同じように繰り返してください」

「えっ!? わたくし、歌はーー」

「王女殿下より、あなたが歌もお得意だと聞いております。それを考慮して書き換えた台本です。歌っていただけないと、このオペラは失敗に終わります」