自称・悪役令嬢の華麗なる王宮物語-仁義なき婚約破棄が目標です-

とある宴席で、ポーブル大尉に一目惚れしたイザベル嬢は、過去に一度、彼に恋文を送ったことがあった。

しかし大尉は今の妻と婚約中であったため、彼女の想いには応えられなかった。

それでもイザベル嬢は純粋に大尉を愛し続け、彼が戦地に赴く前には、必ず無事を祈る手紙を送っていたのだという。

そんなイザベル嬢の優しさに、ポーブル大尉は密かに心を揺らしていた……というストーリーが後付けされていた。


(観客が疑問のままで終わらないように、歌で説明したのね。わずか数日での曲作りと練習は、きっと大変だったことでしょう。歌劇団の皆さんの協力に、感謝しなけれればならないわね……)


観客たちのざわめきは今は収まり、誰も知らない新しい展開に、皆がワクワクした目を向けていた。

注目の中で焦るイザベルが、「こんなの困るわ!」とセシリアに詰め寄った時、ロビーに繋がるドアが外側から開けられた。

邪魔にならないよう、ツルリーがサッと避けると、現れたのはトワルである。


「イザベル嬢! ああ、お会いしたかった」


憧れの役者が目の前にいて、自分に呼びかけている。

それだけでイザベルの頬は瞬時に熱くなるが、近づいてきたトワルに肩を抱かれ、観客席からよく見えるようにと、手すりの際まで連れていかれては、羞恥心から耳まで真っ赤になってしまった。