自称・悪役令嬢の華麗なる王宮物語-仁義なき婚約破棄が目標です-

戸惑いに眉をひそめたイザベルが、セシリアの肩を掴んだ、その時……スポットライトがロイヤルボックスを照らした。

それと同時に、トワルが右手を差し出すようにイザベルに向け、よく通るテノールの声で呼びかける。


「そこにいらしたのですか、我が愛しのイザベル嬢。死を受け入れようとした時に浮かんだのは、妻ではなく、あなたの顔でした。真実の愛はそこにあったのです。今すぐ、あなたを迎えに参ります!」

「えっ、えっ!? ちょっとセシリア、どうすればいいの?」


驚きうろたえるイザベルが逃げ出さないよう、ロビーと王族専用通路へと繋がる二か所の扉の前には、侍女ふたりが立ち塞がっている。

「そこを通しなさいよ!」とイザベルが侍女たちに言った時には、トワルは舞台から姿を消していた。

きっと彼は、バックヤードの関係者通路を走って、階段を目指していることだろう。

その間、舞台では、ポーブル大尉と戦っていた敵兵十人が、オーケストラに合わせて歌っていた。


その歌詞は、ポーブル大尉とイザベル嬢がどこでどのようにして知り合ったのかという、説明文になっている。