自称・悪役令嬢の華麗なる王宮物語-仁義なき婚約破棄が目標です-

ため息交じりに「トワル……」と呟いたイザベルの声は、熱っぽい。

その反応に、セシリアはクスリと笑う。


(イザベルはトワルさんの大ファンなのよね。こうして見ているだけでうっとりしちゃうのに、もし耳元で歌われたら、どうなるのかしら……?)


セシリアは侍女たちと共に、こんな作戦を企てていた。

百年ほど前から演じられてきた、この由緒正しきオペラを作り変え、イザベルを役者として、途中から出演させてしまおうというものだ。

四日前に劇団長と主役のトワルを城に呼びつけたセシリアは、その旨を話し、ストーリーの変更を要求した。

『イザベルは前々から一度、舞台に立ってみたいと話していましたの。親友へのサプライズプレゼントですわ』と、嘘の理由付けもした。


けれども劇団長に拒まれてしまった。

『練習もなしに素人を舞台に上げるなどと、無謀でございます』

『イザベルは即興で芝居ができるわ。歌もきっと上手よ』

『いや、しかしですね、パーティーの余興ではなく、大勢の観客がいる劇場ではーー』


快く引き受けてもらえるとは、最初から思っていなかったので、セシリアは慌てない。

どうすれば説得できるかも練習済みであり、スッと笑みを消した彼女は、威圧するように相手を睨みつけ、偉そうな態度で厳しく言い放ったのだ。


『このわたくしのお願いを、聞けないとでもいうの? できないじゃなく、どうすればできるのかを考えなさい!』


王女の権力を振りかざすセシリアは、とても悪役令嬢らしく、側で見守っていた双子の侍女は、主君の成長ぶりに、思わず瞳を潤ませたのであった。