自称・悪役令嬢の華麗なる王宮物語-仁義なき婚約破棄が目標です-

「わたくしは前々から、エストラード歌劇団のファンですもの。この招待を断る理由はないわ。あなたの仕返しなんて怖くない」

「うんと悪巧みしているのよ? 少しも怖くないの?」

「ええ、全く。侍女をふたりも連れてきたのは、それに協力させるためなのかしら? 残念だけどすでに作戦は失敗よ。嫌がらせは、相手を警戒させないように秘密裏にやるもの。これからやりますと宣言するなんて、愚かだわ」


嫌味な言い方で、愚か者扱いまでされたというのに、セシリアの笑みは崩れない。

嬉しそうにクスクスと笑うと、イザベルの右手を握り、親しみを込めた声で問いかける。


「今日も悪役令嬢なの? お手本はもう充分なのに。それにしてもイザベルは、演技が上手ね。感心するわ。でも……歌はうまく歌えるのかしら?」

「歌……?」


イザベルが眉をひそめて問い返したその時、「間もなく開演でございます」という劇場関係者の声が聞こえた。

ロビーにいた客がホール内にゾロゾロと移動を始め、セシリアもイザベルの手を引いて、ロイヤルボックスに戻った。

横並びにされたビロード張りの椅子に、左からツルリー、セシリア、イザベル、カメリーの順に腰を下ろす。


「さっきの話、どういうこと? 無理強いされたって歌わないわよ」