自称・悪役令嬢の華麗なる王宮物語-仁義なき婚約破棄が目標です-

それから十日ほどが経ち、くじいた足の痛みが引いた頃。

セシリアは双子の侍女を伴って馬車に乗り、王都一の歌劇場にやってきた。

その目的はオペラ鑑賞……ではなく、イザベルに仕返しするためである。


ドラノワ家でのサロンパーティーの後、帰城したセシリアは、自室にて双子の侍女たちとこんな会話を交わしていたーー。


『イザベル嬢への仕返し、とってもいいと思います。今までセシリア様をいじめてきた恨み、きっちり晴らしましょう!』

鼻息荒く張り切ったのはツルリーで、それに対してカメリーが淡々と指摘を入れた。

『目的が違うわ。あくまでもターゲットがイザベル嬢であるというだけよ。私怨を持ち込めば冷静に計画を遂行できない。子供の喧嘩じゃないのよ。感情的になっては駄目』

『誰が子供なのよ! 私はカメリーより二十分早く産まれたお姉さんよ!』


ツルリーとカメリーが、いつもの如く口論になっているというのに、セシリアは止めようとしなかった。

なぜなら、腑抜けていたからだ。

長椅子に寝そべってクッションを抱きしめ、ウフフと笑いながら、独り言を呟いていたのである。


『クロードさんの腕が、胸が、お顔が……。お姫様抱っこされちゃった……』

『セシリア様、いつまでのぼせてるんですか。仕返し方法を、まだ少しも決めていませんよ。……駄目だわ。目がハートになったまま元に戻らない。カメリーどうしよう?』

『ツルリー、サルセル王太子の肖像画を外して持ってきて。夢の世界から現実に引き戻さないと、金貨がもらえな……いえ、結婚が決まってしまう』