(冗談なのね。ちょっと残念な気がするわ……)
鼓動が壊れそうな速度で鳴り立てる中、セシリアが躊躇いがちにそっと腕を回しかければ、彼の肩越しにイザベルと視線が交わった。
「あ……。イザベル、今日はどうもありがとう。楽しかったわ。また会いましょう」
別れの挨拶をしてもイザベルは返事をしてくれず、腕組みをして睨むような視線を返してくるのみである。
しかしセシリアは、親友の不機嫌さを感じ取れない。
それは勘違いしているからというよりは、ときめきの真っ最中であるためであった。
燭台の明かりに照らされる廊下に出て、少し歩調を速めたクロードに、セシリアは愛しさを込めてキュッとしがみつく。
大胆なことをしていると自覚して、恥ずかしさが込み上げたが、「大丈夫。決して落としません」とクロードが勘違いしてくれた。
それならばと、もう少し腕に力を込めて、彼に体を密着させてみる。
(ああ、夢のようだわ。怪我をしてよかった……)
そう思った直後に、『あら?』と心の中で疑問を呟いた。
(もしかして、心臓が壊れそうなほどにドキドキさせられているのも、イザベルの企みかしら? とても上手な悪役ぶりだけど、やっぱりイザベルは優しいわ……)
執事が開けてくれた玄関ドアから外へ出ると、クロードの額の傷のような三日月が、紺碧の空に浮かんでいた。
晩夏の夜風は涼やかで心地よい。
愛しい彼の腕に抱かれることができて、親友に深く感謝するセシリアであった。
鼓動が壊れそうな速度で鳴り立てる中、セシリアが躊躇いがちにそっと腕を回しかければ、彼の肩越しにイザベルと視線が交わった。
「あ……。イザベル、今日はどうもありがとう。楽しかったわ。また会いましょう」
別れの挨拶をしてもイザベルは返事をしてくれず、腕組みをして睨むような視線を返してくるのみである。
しかしセシリアは、親友の不機嫌さを感じ取れない。
それは勘違いしているからというよりは、ときめきの真っ最中であるためであった。
燭台の明かりに照らされる廊下に出て、少し歩調を速めたクロードに、セシリアは愛しさを込めてキュッとしがみつく。
大胆なことをしていると自覚して、恥ずかしさが込み上げたが、「大丈夫。決して落としません」とクロードが勘違いしてくれた。
それならばと、もう少し腕に力を込めて、彼に体を密着させてみる。
(ああ、夢のようだわ。怪我をしてよかった……)
そう思った直後に、『あら?』と心の中で疑問を呟いた。
(もしかして、心臓が壊れそうなほどにドキドキさせられているのも、イザベルの企みかしら? とても上手な悪役ぶりだけど、やっぱりイザベルは優しいわ……)
執事が開けてくれた玄関ドアから外へ出ると、クロードの額の傷のような三日月が、紺碧の空に浮かんでいた。
晩夏の夜風は涼やかで心地よい。
愛しい彼の腕に抱かれることができて、親友に深く感謝するセシリアであった。


