自称・悪役令嬢の華麗なる王宮物語-仁義なき婚約破棄が目標です-

十人の令嬢たちを玄関まで送っていったイザベルは、数分してセシリアのもとに戻ってきた。

ドアを閉めてふたりきりになった途端に、イザベルはなぜかスッと笑みを消した。

キョトンとして目を瞬かせているセシリアにゆっくりと歩み寄り、真横で足を止める。

そして無言でじっと見下ろしてくるから、セシリアはたじろいだ。


「ど、どうしたの……?」


その問いかけには答えずに、イザベルは腕組みをして不愉快そうに口を開く。


「もうすぐ結婚が決まるんですって? カナール王国のサルセル王太子と。先月、お父様から聞いたわ」


そう言われてセシリアは、イザベルが不満顔をしている理由を察した。

親友なのに、なぜ教えてくれなかったのかと、怒っているのだろう。


「内緒にしていてごめんなさい! これには事情があってーー」


心から望んだ結婚ならば、公式発表前でもこっそりと親友に打ち明けたであろう。

けれどもサルセル王太子との結婚は、破談にするべく努力している最中なので、誰にも話さなかったのである。

そのような弁解を慌てて話したセシリアであったが、イザベルは横髪を指先で払うと、「違うわよ」と冷たい声で否定した。