自称・悪役令嬢の華麗なる王宮物語-仁義なき婚約破棄が目標です-

皆が振り向けば、他の令嬢たちを玄関で見送り、戻ってきたイザベルが、笑顔でこちらに近づいてくる。

口元は確かに微笑んでいるけれど、目だけは不機嫌そうな色を湛えていた。


「皆さん、お迎えの方々が待ちくたびれておりますわよ。あまり長居されますと、我が家の玄関前が、馬車馬の贈り物でいっぱいになってしまいますわ」


馬車馬の贈り物とは、馬糞のことである。

それをユニークな冗談と受け取った令嬢たちは、オホホと笑い、「帰りましょうか」と話を終わらせた。

ホッとするセシリアに、イザベルがニコリとして言う。


「あなたはまだ座っていて。王城の馬車は、まだ到着していないようだから」

「ええ、そうするわ。イザベル……ありがとう!」


セシリアの胸には、温かな思いが込み上げていた。

きっとイザベルは、結婚の話をされて困っていたセシリアを助けてくれたのだ。

もしかすると足を痛めていることも察して、皆に怪しまれずに最後に退出できるよう、うまく言い訳をしてくれたのかもしれない。

王城の優秀な御者が、迎えの時間に遅れることなど、これまでに一度もなかったからである。


(イザベルは賢くて優しい人だわ。彼女を親友に持つことができて、私は幸運ね……)