自称・悪役令嬢の華麗なる王宮物語-仁義なき婚約破棄が目標です-

おそらくは相手がカナール王国のサルセル王太子だということも、知られているとは思うけれど、正式な発表を待たずして口に出すべきではない。

それをわかっているから、話しかけてきた令嬢は、相手を知らないふりをしたのだろう。


誰かがセシリアの結婚について話題に上げるのを待っていたかのように、他の令嬢たちも一斉に話しだす。


「わたくしも聞きましたわ! セシリア様を妻として迎える男性が羨ましいと、兄がこぼしておりましたのよ」

「おめでとうございます、というのは早いですわよね。でも、とっても嬉しいです!」

「この中で結婚に一番乗りはセシリア様ですね。さすがでございます。何事においてもわたくしたちの先に立っておられて、憧れの存在ですわ」


結婚から逃れようとしているセシリアなので、お祝いされても胸が痛むばかりである。

足首も痛いから帰りたいけれど、椅子から立ち上がれば顔をしかめてしまいそうだ。

早く先に出ていってほしいという思いから、「あの、皆さん、そろそろーー」とセシリアが帰宅を促そうとしたら、大きく手を二度叩く音がドア口から聞こえた。