十八時は、待ち合わせ時間として定番なのか、水時計前には十五人くらい集まっていた。
やがて待ち人が来た人たちが抜けていき、新たな待ち合わせの人が集まってくる。
そんな感じで、十九時半くらいまでは、人が入れ代わり立ち代わりそこにたたずんでいた。

ところが二十時を過ぎると、通り過ぎる人はいても、立ち止まる人は少なくなっていく。
残った数人がなんとなく辺りを気にしはじめ、自分が最後になってたまるもんかとひそかに願っているのが伝わってくる。

俺は、そんな人間観察を楽しみながらも、あの日の彼女のことに思いをはせた。

あの日君は、何時まで待っていたんだろう。
いつだって、待ち合わせに先に来るのは君の方で、俺は、待つことがこんなに不安になるものだとは思っていなかった。

風が思い切り当たるこんな寒い場所で、電源の切れた俺の携帯に、きっと何度も電話して。
呆れて帰ってくれても良かったのに、君は俺が来ると信じ続けてくれた。

そんな君を、あんな風に泣かせたくなかった。
あんな風に傷つけたくなかった。

一番大切な人を傷つけた俺にできること。

それは、ここで約束もないまま、君を待ち続けることだ。