「せっかく憧れのケーキが手に入ったんだから、憧れの食べ方で食べようよ。誰も見てないんだから行儀なんて気にしない気にしなーい」


そう言って海莉が渡してくれたフォークを、あたしは恐る恐るケーキに突き刺した。


そのまま大きく削り取って、パクリと口の中に入れる。


「うわ、なんだかすごくイケナイ贅沢感!」


やってはいけないって言われてることをやるって、くすぐったい気分だ。


ビックリするほど濃厚な生クリームはコクがあって、甘さスッキリ。スポンジはフワフワの雲みたいに柔らかい。


フルーツはみずみずしくて宝石みたいな艶があって、とっても香りがいい。


「お、おいしい!」


「本当だ! すっごくおいしいね!」


「海莉のおかげで子どもの頃からの夢が叶ったー! うれしい!」


「アハハ。大袈裟だなあ」


大きな口を開けた海莉が、ケーキをパクリと食べて、お日様みたいにニコッと笑った。


「うーん、最高!」


うん。本当に最高。


海莉の笑顔は、まるで満開のヒマワリ畑みたいだよ。


キラキラ弾ける笑い声を聞くと、どんなにつらいときでも、つられて一緒に笑っちゃって、いつの間にか元気が出るんだ。


ねえ、わかってる? 海莉は最高に素敵な女の子だよ。


あたしの親友は最高だよ!


「スキあり! マスカットはいただいた!」


「あー、海莉が取った! あたし狙ってたのに!」


「えへへ、早い者勝ち。この世は弱肉強食なのだよ瑞樹ちゃん」


「スキあり!」


「あ、しまった! あたしのイチゴ!」


ふたりで競い合って食べるケーキも最高。


でもなによりも最高なのは、海莉の存在と、こうして過ごす幸せな時間。


ありがとう、海莉。


本当に本当にありがとう‥‥‥‥。