その日のお昼休み、雄太が教室まであたしを訪ねてきた。


「いま話せるか?」


深刻な顔をした雄太に促されて、教室を出てすぐの窓際にふたり並んで立った。


「瑞樹、大丈夫か? ……いや、大丈夫なわけないよな。わかりきったこと聞いてごめん」


雄太は沈んだ声で謝った。


謝ることなんてないのに。雄太が本当に心配してくれてる気持ち、ちゃんと伝わってるよ。


「お前の気持ち、俺なりにわかってるつもりだから」


「うん。ありがとう」


うなずいて、あたしは少し唇の両端を上げた。


本当に雄太はあたしの気持ちをわかってくれているんだと思う。


その優しさがうれしくて、悲しい。


だって、こうしていると、“好き”の気持ちが胸の奥からどんどん溢れ出てくるんだ。


ホントだったらそれは幸せなはずなのに、今はもう、素直な気持ちのままで雄太を見られない。


それはやっぱり寂しくて悲しいよ。


もちろんその気持ちを口にも顔にも出せるわけもない。


重い唇を閉じたまま、あたしたちは窓の外を眺めていた。