ずっと恋していたいから、幼なじみのままでいて。

どうすれば雄太を失わずに済む?


絶対に失くさなくても済む方法なんて、ひとつしかない。


それは、手に入れないこと。


持っていなければ失うこともない。


お母さんの言うことは正しい。このまま、ずっと幼なじみの関係でいればいいんだ。


恋に終わりはあっても、幼なじみに終わりはないから、いつまでもあたしは雄太の隣にいられる。


失ってしまうくらいなら、その方がいいに決まってる。


なんだか昨日は、勝手に未来に夢を見ちゃったけれど、ちょっと冷静になって考えようよ。


あたしが雄太に想われるなんて、現実的にありえる?


自分が好きな相手から想われるなんて、奇跡みたいな確率だよ。


そんなの普通にありえない。昨日のあたしは変に浮かれて勘違いしちゃっただけだ。


きっと雄太だって、特別な意味であの言葉を言ったわけじゃないんだよ。


よかった。気がついて。


勘違いしたままうっかり告白なんかしたら、大恥をかくところだった。


気まずくなって、取り返しがつかないことになっていたかも。


そんなの嫌だ。あたしはずっと雄太にとって特別な存在の女の子でいたい。


だから雄太とは幼なじみのままでいるのが一番いい。それが一番幸せなんだ……。


「起立」


夢中になって考えていたら、いつの間にか担任が教壇の前に立っていて、日直が号令をかける。


イスを引く音がガタガタと教室中に響いて、我に返ったあたしも立ち上がった。


礼をして着席してからも、頭の中は雄太のことばかりだ。