ずっと恋していたいから、幼なじみのままでいて。

なにか話題を提供しようと口を開いた瞬間、思いがけないことを言われて言葉を失った。


不意打ちの重みが胸にズシンと響く。


「もしかしてまたケンカしたのか? おじさんとおばさん」


心配そうに聞かれたけれど、どう答えればいいかわかんなくて視線がフラフラ動いた。


散歩中の子犬の首輪の色や、車道の車のウィンカーの点滅なんかを、無意味に目で追ったりして。


一生懸命に言葉を探したけれど、なにも出てこない。


結局重い気持ちに引っ張られるみたいに、下を向いて答えた。


「ううん。ケンカしてくれれば、まだいいんだけどねー」


実はうちの両親は、去年からずっと別居中なんだ。


あたしが中学生を卒業する前あたりから、ふたりの様子がおかしくなった。


前はよく会話してたのにあまり話さなくなって、笑顔がなくなって。


一緒にいるところを見なくなった。


変だなって不安に思っているうちに、どんどんケンカが多くなっていった。


たぶん以前から、あたしの見ていない所でケンカを繰り返していたんだと思う。


あたしが心配しないように気を遣ってくれていたんだろう。


でも、そんな配慮もできないくらいの状態になったらもう、後は早かった。