ランドセルを背負った小学生たちが横を走り抜けていったり、すぐそこの保育園から親子連れが出てきたり。


そんな普段通りの光景を特別に感じるのは、大好きな雄太が隣を歩いているからだ。


店先に置かれた看板の色も、街路樹の葉が夕方の風に揺れる動きも、雄太がいればキラキラのエフェクトがかかって見える。


ただ雄太が存在しているってだけで、ここまで世界が違って見えるんだ。


本当に雄太ってすごいな。


ねえ、もしかしてキミは、あたしを幸せにする魔法を使えるんですか……?


「ん? 今なにか言ったか?」


まるで心の声が聞こえたみたいに、雄太がヒョイと振り向く。


「ううん。なにも」


あたしは少し微笑んでフルフルと首を横に振った。


こんな乙女チックなことを考えているなんて、ナイショ。


なんでもないふりして笑って、口にする話題も、恋とはまるで関係ないことばかり。


気持ちを隠すのには、慣れっこだよ。こんなに胸が熱くてドキドキしてることなんか、絶対に言わない。


こんなに雄太への想いでいっぱいになっていることも、絶対に教えない。


どんなに体中からあふれ出しそうになっても、伝えない。


だって……好きなんだもん。


本当に雄太のこと、好きなんだもん。


切ないくらいに好きだから、胸が痛くなるくらいすごく好きだから、言えないんだよ……。