驚いてお父さんを見つめるあたしの視界には、同じように驚いた表情でお父さんを見ているお母さんがいる。


あたしたち全員分の視線をしっかりと受け止めて、お父さんが言葉を続けた。


「私たちは家族を続けることは叶わなかったけれど、家族になったことは後悔していない。瑞樹という宝物と出会えたことは、私の人生最大最高の喜びだよ」


「お父さん……」


「お前は私たちにとって、かけがえのない宝物だ。なあ、瑞樹。この世界には決して壊れも失われない宝物が、ちゃんと存在するんだよ」


自分を否定し続けていたあたしの心に、熱い波がザッと押し寄せて、痛みを一気に押しのけていく。


お父さんの言葉が、あたしの鼓膜を静かに震わせて、心に染み込んでいく。


乾いた砂に撒かれた水みたいに、一滴も無駄にならずに、奥深くまで吸い込まれていく。