ずっと恋していたいから、幼なじみのままでいて。

そう伝えたいのに、どうしても口から言葉が出てこない。


自分の感情を整理してきちんと相手に伝えるって、すごく苦手なんだ。


とても大事なことなのに。でも大事なことほど心の底に鉛みたいに沈んでしまって、取り出せない。


「どうか誤解しないでください。瑞樹は責めたいわけじゃないんです」


雄太のその言葉に、あたしは目を瞬かせた。


「瑞樹は、おじさんたちが瑞樹を悲しませないためにちゃんと努力してくれたことを知っています。知っているから謝られると余計につらいだけなんです。……だよな?」


こっちを向いた雄太が、あたしにそう問いかける。


その穏やかな目に引き込まれるように、あたしは素直にうなずいていた。


自分で言い出せなかった自分の気持ちを、雄太が言ってくれている。


まるで、ずっと開け方の分からなかった箱を、目の前で簡単に開けてもらったようだ。


「瑞樹は、ただ悲しいんです。ずっと育ててきた大切な宝物を、一緒に育ててくれていた当の家族から、これは偽物だから壊すしかないと断言されたような気がして」


雄太の口を通して、あたしの心の箱から中身がポロポロこぼれ出す。


出口を見つけられずに、膨らむ一方だった気持ちが、ようやく行き場を見つけた。


痛いくらい溜まって澱んでいたものがやっと取り出せて、どんどん箱が軽くなっていくのを感じる。


「信じていたものが壊れてしまったから、これから先、信じることが正しいのかさえわからない。信じたあげくにまた否定されて、壊されることが怖くてたまらないんです」