「わかった。じゃあ雄太をここに連れてきて」


「それが雄太君、あたしたち全員に聞いてもらいたい話があるんですって」


「は? 話?」


またまた意味不明なことを聞かされて、あたしは目を丸くした。


全員に話って、雄太があたしのお父さんとお母さんになんの話があるの?


あ、もしかして離婚を思いとどまらせようとか?


いやでも普通、離婚届にハンコを押す日に、いまさら家に乗り込んで来る?


説得するならするで、もっと前に来て話しているでしょ。賢い雄太らしくない。


お母さんも片手を頬に当てて首を傾げながら、本当に困った顔をしてる。


「今日は都合が悪いから後日に改めて来てちょうだいって雄太君に頼んだら、どうしても今日じゃなきゃダメなんだって言って、帰ろうとしないのよ」


そんな聞き分けのない強情を張るなんて、ますます雄太らしくない。


「どういうことだろ? さっぱり意味がわかんない」


「お母さんもわからないわ。でも雄太君もうリビングにいるから、とにかく瑞樹も来なさい」


たしかにここでふたり揃って、わからないわからないを連発していても仕方がない。


あたしは頭上にハテナマークを何個も浮かばせた状態で、とにかくリビングへ向かった。