ずっと恋していたいから、幼なじみのままでいて。

コーヒーなんて普段は飲みもしないくせに。


大人ぶって無理して、こんなのオーダーしちゃってさ。


誰に対してマウント取ろうとしてるの? 田中さんは普通にクリームソーダを頼んでるのに。


きれいに透き通ったグリーンの色と、真っ黒い液体を見比べたら、なんだかますます惨めな気分になった。


あたし、バカみたい。ここでこんなことしてたってなんの意味もないじゃん。


「あの、あたし大丈夫みたいだし、そろそろ帰……」


「あたし、橋元先輩に謝らなきゃならないんです」


席を立とうとしたらそんなことを言われて、あたしはイスから浮かした腰をまた下ろした。


謝る? それはきっと雄太のことだよね?


『あなたから奪ってしまってごめんなさい』って?


そんなこと言われても余計に……。


「あたし、来月になったら県外に引っ越すんです」


いきなり予想外の話をされて、目が点になった。


「え? 引っ越し?」


「はい。親が離婚したので母方の実家に行くことになりました」