ずっと恋していたいから、幼なじみのままでいて。

そしてそれから、十数分後。


転んだ現場からすぐ近くの喫茶店で、あたしは田中さんと向かい合う席に座りながら、ひたすら思い悩んでいた。


なぜ? なにがどうして、こうなったんだろう?


いや、道路に捨てられていたバナナの皮を偶然踏んづけて、引っくり返って頭を打ったことはわかってるけど。


彼女とあたしが同席しているという状況が理解できなくて、額に手を当てて真剣に考え込んでいたら、田中さんが心配そうに話しかけてきた。


「先輩、頭痛いんですか? 大丈夫ですか?」


「え? あ、大丈夫。心配ないから」


実は引っくり返ったとき、奇跡的にエコバッグが後頭部の下敷きになって、頭をガードしてくれた。


粉物をいっぱい買い込んでいたから、クッションの役割をしてくれたらしい。


おかげで頭は大丈夫。疑問符でいっぱいではあるけれど。


「あたしが追いかけたせいで本当に済みませんでした。少し安静にして、動かないでいた方がいいと思います」


「そ、そうだね」


「もしも具合が悪くなったら、遠慮しないで教えてくださいね」