わかっているつもりだったけど、認めたくなかった。心のどこかで必死に拒否していた。


なのに、ついに動かしようもない現実を突きつけられてしまった。


雄太の心はもう、あたしにはない。


絶望の二文字に心がどんどん侵食されていく。


両目から涙が勝手にあふれ出て、雨みたいに顎の先からポタポタ落ちていった。


『俺を信じろ、瑞樹』


両手で顔を覆って泣きながら、体育館で雄太があたしに言ってくれた言葉を思い出す。


やっぱりあのとき、素直に信じればよかったの?


雄太は心の底から、あの言葉をあたしに捧げてくれたのに。


これは好きな人を信じなかったことの、当然の結果だ。


ふたり一緒に過ごした子どもの頃からの大切な思い出が、次々と脳裏に浮かんでは、シャボン玉みたいに儚く消えていく。


もうあの日々も、あたしの夢も、戻らない。


雄太。雄太。雄太。


大好きな雄太……。


「あの、もしかして橋元先輩ですか?」


すぐ近くで声が聞こえて、ビクッと顔を上げたあたしは、ショックのあまり気を失いそうになった。


小花柄のワンピース姿の田中さんが目の前に立って、心配そうにあたしの顔を覗き込んでいる。


しまった、見つかった! こんな惨めな姿を見られた!


「あ、橋元先輩!」


あたしは無我夢中でその場から逃げ出していた。


とてもじゃないけれど、これ以上は一秒だって田中さんの姿を見たくないし、彼女にもあたしの姿を見られたくない。