あたしは弾みをつけてベッドから起き上がり、学校へ行くための準備を始めた。


本音を言えば学校なんか行きたくない。雄太にも田中さんにも会いたくないもの。


でも学校へ行けば海莉に会える。


海莉には昨日の夜、電話で話をぜんぶ聞いてもらった。


あの出来事を言葉にするだけで息が苦しくなって、まるで発作みたいにしゃくり上げながらしゃべっていたから、ずいぶん聞き取りにくかったと思う。


海莉もひどくショックを受けていたようだった。


とにかく、『朝のホームルームが始まる前に中庭で会おう』と約束をして電話を切ったから、あたしを待ってくれているはず。


海莉にこの気持ちを聞いてもらえることだけが、慰めだ。


いつもより早めに学校に着いて中庭へ行ったら、もう海莉が来ていてあたしを待ってくれていた。


「瑞樹!」


海莉がすっ飛んできて、あたしに抱きつく。


背中にギュッと回った両腕の力と、ふわりと香ったシャンプーの匂いに、少しだけ心がホッとする。


海莉の肩に顔をうずめて、あたしは、声を殺して泣いた。