目の前のセピアに染まった世界から、あたしひとりだけが置き去りにされたみたいだ。


心細さと寂しさに涙があふれて、すべてが霞む。


瞬きをした一瞬だけ視界が晴れても、また次の瞬間には、ぼやけてしまう。


「ヒック、ヒック‥‥‥」


胸の奥から噴き出す感情が、嗚咽になって口からこぼれた。


行き交う人が、人混みの中で遠慮なく泣いているあたしに物珍しそうな視線を投げつける。


……見ないで。


なんでもないから。あたしは、この曲が悲しくて泣いているだけだから。


どうか誰もあたしを見ずに、ここから黙って立ち去ってよ。


熱い涙をポタポタこぼし、苦しい息を繰り返し吐き出しながら、深い黄昏の中であたしは泣き続ける。


いつの間にかもう、きれいな夕日はビルの谷間に沈んでしまっていた。


頭上は夜という名の藍色に染まり始めて、今日という日が容赦なく終わっていく。


もう、終わってしまう。


ポツポツと街灯が灯り始めた薄闇の世界で、あたしは、座り込んだまま涙を流していた。