あぁ、カッコいいな。雄太を見てると胸が熱くなって、何度でも苦しくなっちゃう。


正面から見る顔も好きだけど、あたしは横顔が一番好き。


濡れたような黒い瞳が、なにかを熱心に見つめている横顔が本当に素敵なんだ。


幼なじみの特権で、このきれいな横顔のラインをいつも間近で見上げることができて、幸せだな。


「じゃあ、またなにかあったら報告上げますから」


「頼む。じゃあな」


生徒会長が右手を上げて離れていく。


その背中を見送ってから、雄太が軽く微笑みながらこっちに近づいてきて、あたしに英語のテキストを差し出した。


「瑞樹お待たせ。このテキストだろ? ほら、貸してやるから」


「ありがとう。助かる」


「家を出る前に忘れ物がないかちゃんとチェックしろよ。いつも言ってるだろ?」


生徒会長と話していたときより、少しだけトーンの上がった柔らかい声。


たぶんこの微妙な変化も、幼なじみのあたしだけに与えられている特権だ。


密かに感じる優越感に自然と唇が緩む。


やっぱり幼なじみって最高だなあ!


「なにニヤニヤしてんだよ? 気持ち悪いな」


知らないうちに頬の筋肉もユルユルになってたみたい。


あたしは慌てて表情筋を引き締めて、なんでもない風を装った。


「べ、べつに。なんでもない」


「嘘つけ。なんか変なこと考えてたんだろ?」


「なんでもないもん」


「俺に隠し事する気か? 今すぐ白状しないと……こうだ!」


「わっ! ちょ、なにすんのよっ」


いきなり雄太に両手で頭全体をワシャワシャされて、あたしは軽く悲鳴を上げた。