どうしたんだろうと視線を向けたあたしは、すぐにその理由を理解した。


隣の教室の廊下の窓際で、雄太が立ち話をしている。


雄太の向かいには、あの田中桃花さんが笑顔で立っていた。


「また来てる。あの子」


向かい合って楽しそうに話しているふたりを睨みながら、海莉がめったに聞かないような低い声でつぶやく。


隣で黙って立ち尽くすあたしは、心の中を強引にグルグル掻き回されているみたいな、息苦しい気持ちでいっぱいだ。


ああ、運が悪いな。また見ちゃった……。


あたしたちの視線に気がついたのか、雄太がチラリとこっちを見た。


視線がカチ合って、見つかったバツの悪さにあたしの心臓がズクンと疼く。


今あたし、どんな顔をしているんだろ? どんな目をして雄太を見ているんだろう?


雄太の唇が、なにかを言いたそうに一瞬動いたけれど、あたしは急いで目を逸らした。


たぶん、すごい暗い目をしているだろう自分の姿を、雄太に見られたくない。