「じゃあ、友だちから」


マイクを通して聞こえた当たり障りのない返事に、一斉にブーイングが起きる。


でも女の子は……田中さんはニコッと微笑んで「はい!」とうれしそうに答えた。


そんなふたりを見て、生徒たちから明るい拍手と指笛が盛大に湧き起こる。


「ほらほら! もうそろそろ競技を進めるぞ!」


また教頭先生が割り込んできたのを合図に、雄太と田中さんが一緒にそこから移動を始めて、ようやく騒動が収まった。


生徒たち誰もかれもみんな、おもしろい動画でも見た後みたいな顔してる。


今はまだちょっと興奮していても、しばらくすれば興味が次に移るみたいな。


現にもう、ほとんどの人は雄太たちのことを見ていなくて、次のムカデ競争に注目してる。


でもあたしは違った。


なにか会話を交わしながら、ふたり並んで得点集計場所に向かう雄太と田中さんの姿を、一瞬も見逃さずに見続けていた。


しっかりした上級生らしい態度の雄太と、落ち着いた微笑を浮かべる田中さんは、なんだかよく似ているように見えた。