ずっと恋していたいから、幼なじみのままでいて。

その笑い声に追い立てられるように、あたしは走り続ける。


校庭から離れて体育館の裏手に駆け込み、やっと立ち止まった。


周りに誰もいないことを確かめてから、ゆっくりとその場にしゃがみ込む。


そして、なにかから身を守るようにヒザを抱えて丸まって、じっとしていた。


ほかになにをすればいいのか、わからなかったら。


校庭からは、運動会におなじみの軽快な音楽が聞こえてくる。


さも楽しそうな空気は、独りぼっちのあたしなんかお構いなしに、どんどん盛り上がっている。


ねえ、どうして?


どうしてこんなことになっちゃったの?


「瑞樹、ここにいたの?」


少し離れた所から、音楽に混じって海莉の声が聞こえた。


きっと心配して探しに来てくれたんだ。でも顔を上げることができない。


うずくまったまま身動きもしないあたしの隣に、海莉が近寄ってきて、しゃがみ込んだ気配がした。


「ねえ、瑞樹」


「あの紙ね、『想い人』って書いてあったの」


「……そっか」


「あたし、また逃げちゃった」


また雄太を拒絶した。


もう二度と拒絶なんかしたくなかったのに。


よりによって、全校生徒や先生たちや父兄たちの前で、恥かかせた。


こんなの最悪のやり方だって自分でもわかってる。


でも、じゃあ、ほかにどうすればよかったんだろう?