学校の近くを逃げ回っていたようだから、目撃者も多そうだ。


「……そうなんだ」


『あたしも見たよ』とは、なんとなく言えなかった。


こういう話をすると、きっと桃菜は嫌がるだろうから。


「すっげぇ人数が1人を追いかけるんだ。ターゲットは狭い路地に逃げて行ったけど、あれだけの人数がいたら、逃げ切れないだろうな」


逃げ切れない。


じゃあその後どうなったの?


心の中で質問しても答えなど返ってこないが、ターゲットがどうなる運命なのかはもうみんなわかっていた。


けれど、実際にその場面を見たことはないし、なんだかんだ言いながらも幸せな日常を遅れているため、つい忘れてしまうのだ。


《強制食料制度》という、最低な法律のことを……。