なにも言わずに電話を切られてしまうかもしれないと思っていた。


「今日だけでいいから、家に泊めさせてほしい」


『家にか……』


思案しているような声色だ。


あたしは祈る思いで良の言葉を待った。


『今家の近くまで来てるんだろ?』


「うん」


『それなら裏手に回ってきてくれ。外の小屋だったら誰にもバレないかもしれない』


「本当に!?」


『うん。その代わり、物音は極力立てないようにしろよ』


「わかった!」


あたしは大きく頷いて電話を切ったのだった。