咄嗟のことで動けなくなる。


「俊和危ない!」


どうにか叫び声を上げると、俊和は身を屈めてナイフをよけた。


続けて男の手首をつかみ、ナイフを叩き落とした。


素早い動きに、飢えた男はついて行くこともできず、簡単に捕まってしまった。


「逃げろ唯香!」


「でも……」


「いいから、早く逃げろ!」


俊和の言葉に背中を押され、あたしは走り出したのだった。