お父さんは生きている。


その事実に安堵して息を吐きだした。


「あたしがターゲットになるのは明日の正午からよ! 今捕まえれば犯罪になる!」


「知ってるよそんなこと。俺がどれだけターゲットを仕留めて来たと思ってるんだよ」


男は余裕の表情でそう言うと、スーツのポケットから何かを取り出した。


蛍光灯の光でその切っ先がギラギラと光る。


ナイフだ!


ヒッと小さな悲鳴が喉から洩れて出た。


「唯香ちゃんには悪いけど、明日の正午まで俺と一緒にいてもらうよ?」


男はそう言い、あたしの頬にナイフの側面を押し当てたのだった。