「い……いや!」


咄嗟に身を引き、トイレの奥へと走った。


「どうして逃げるの? 俺は奥山さんの部下だよ?」


ユラユラと左右に体を揺らしながら近づいてくる男。


その男の右手が血に濡れているのがわかった。


「ど、どうしてあなたはお父さんのスマホを使ってたの!? 迎えに来るだけなら、自分のスマホで連絡してくればよかったじゃない!」


ジリジリと迫ってくる男は異様な雰囲気をまとい、狂気に満ちて見えた。


しかし、背中に壁がついてこれ以上逃げることはできなくなってしまった。


「あはははは! そうだねぇ唯香ちゃんの言う通りだ」


「……お父さんはどこ!?」


「君のお父さんは会社の屋上で伸びてるよ」