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「こんな状態でも、みんな学校や仕事に行くんだね」


桃菜と2人で学校へ向かう途中、あたしはそう言った。


「食べものがなくても、他のものは普通に機能してるんだもん。こうやって通勤通学の風景を見てると《強制食料制度》なんて嘘みたい」


桃菜は淡々と答えた。


「そうだよね。今までの日本と何も変わらないように見えるけど……それって昔からだったよね。どれだけ大きな災害が起こってもみんなすぐに普通の生活に戻って行く」


「うん。でもそれって目を背けてるだけだよね」


途端に桃菜の口調は険しくなった。


「本当は辛いし、前進なんて簡単にはできないのに、すぐに元に戻ろうとするなんてずるい。そんなことしてたら後から自分が辛くなって潰れちゃうのに」


桃菜の言う通りかもしれない。