「今度は両親にバレないようにする」


良の言葉が耳に入って来ない。


行くべきか、1人で逃げ続けるべきか判断ができない。


そうこうしている間に良は河川敷に下りてきていた。


死体となった元子へ視線を向けて、あたしを見る。


「ここまで追い詰められて……」


良はそう言ってあたしの頬に触れて来た。


一瞬和文との出来事を思い出して体が震えた。


しかし、良のそれは違った。


手から伝わってくるのはただ優しさのみだった。


良の手を伝って、あたしの中から恐怖心が和らいでいくのを感じる。


相手は俊和じゃないのに……。