「ごめん」


逃げようとした瞬間にそう声をかけられて、あたしの足は止まっていた。


ごめんってどういう意味だろう。


あたしはジッと良を見上げた。


太陽の陰になって表情は見えないけれど、さっきの声は真剣だった。


「もう1度、家に来ないか?」


その言葉にあたしはポカンと口を開けていた。


「なんで……?」


か細い声が出ていた。


誰の家に行っても結局は同じことだ。


相手に迷惑をかけるか、自分が犠牲になるかの二択しか存在しなかった。