これは、食べ物なんだ……。


指先についた血を舌で舐めると、鉄の味がした。


普通ならまずくて吐いてしまう味なのに、あたしの体は歓喜していた。


おいしい!


これが人間の味?


こんなにもおいしいものなの?


信じられなくて、元子の額に舌を付けて何度も何度も血をなめとった。


1度人間を食べたらその味が忘れられなくなる。


逃げはじめて最初のころ、たしかそんな風に言っていた人を見た。


あれは本当だったんだ。


気が付けば、あたしは元子の小指に噛みつき、引きちぎっていた。


硬い骨を裂け、柔らかな肉だけにむしゃぶりつく。


指の肉は柔らかく、皮が少し口の中に残った。


「おいしい! おいしい! おいしい!」