強制食料制度

桃菜と桃菜の父親が外出すると、家に残るのはあたしと舞奈ちゃんと2人だけだった。


舞奈ちゃんは4歳で、《強制食料制度》ができるまでは幼稚園に通っていたらしい。


けれど、法律ができて以降、幼稚園や保育園は機能しなくなっていた。


怖い童謡や怖い昔話でよく聞いたことのある、子供を減らす家庭が増えてきたためだ。


それらは公にされていないが、きっと恐ろしいことが行われているのだろう。


「舞奈ちゃん、一緒に遊ぼうか」


その点、舞奈ちゃんは幼稚園に行けなくなったというだけで、まだ元気そうだ。


「うん!」


舞奈ちゃんは元気な声で返事をして近づいてくる。


その表情が愛くるしくて、胸の中が暖かくなってゆくのを感じた。