強制食料制度

思いのほか水深が深くてそのまま流され、途中で意識が途切れたのだ。


「真夜中に外が騒がしくなって出てみたら、唯香が逃げてるんだもん。ビックリした」


そっか。


桃菜の家は近所だからあの騒ぎを聞きつけてくれたのだ。


「助けようと思っても人が多くて助けられないし、どうしようか迷ってるうちに唯香は川に逃げ込んだんだよ」


「そうだったんだ……」


あの人ごみの中に桃菜がいたなんて、全然気が付かなかった。


「でも、その判断は正しかったんだよ。あんな真っ暗な川の中まで追いかけて行く人はいなかったんだから」


あたしはちゃんと逃げ切ったようだ。