強制食料制度

このままじゃ、なにを言われても和文に逆らえなくなってしまう。


奴隷のように生きて行く未来は安易に想像できた。


「うるせぇな! 大人しくしてろよ!」


怒鳴り声をあげてあたしの両肩を掴む。


あたしは咄嗟に手を伸ばし、カッターナイフを握りしめていた。


念のためにスカートのポケットに入れて置いたのだ。


刃を出し、和文へ突き付ける。


これにはさすがの和文もひるんだようで、手の力が抜けた。


「近づかないで」


カッターナイフを両手でしっかりと持ち、和文と距離を置く。


「わかったよ。悪かった。撮影はしない」


「デジカメのデータを消して」


カッターナイフを突き出したまま指示すると、和文はそれに従った。