「唯香?」


そう言われて腕を掴まれ、あたしは振り向いていた。


そこにいたのは驚いた表情を浮かべるクラスメート、森川和文だった。


陸上部に所属している和文は走って追いかけて来たのに、息も切れていない。


「そんなに怯えるなよ」


和文があたしを見て悲しそうに眉を下げてそう言った。


自分でも気が付かない内に、ひどい顔をしていたようだ。


「和文……学校は?」


あたしは振るえる声でそう聞いた。


クラスメートのことがここまで恐ろしくなるなんて、自分でも悲しかった。


「昼で早退したんだ。風邪気味で」


そう言う和文にあたしは頷いて視線を落とした。