残っている野生動物には注意しないといけないけれど、もうそのくらいしか思いつく場所もなかった。


人目を避けながら歩いていると、路地の逆側に人影が見えた気がしてあたしは立ち止まった。


「誰かいるのか?」


そんな声が聞こえてきて反射的に踵を返して駆け出していた。


男の人の声だった。


もしかしたら学校の先生とか生徒かもしれない。


もしかしたら助けてくれるかもしれない。


けれどあたしは止まらなかった。


誰のことも信用しちゃいけない。


それが《強制食料制度》だ。