普段なら誰かに席を譲るのはツグミの役割だった。


あたしが立ち上がろうとする前に必ずツグミが立ち、『アユリは座ってていいからね』と、声をかけてくれるのだ。


思い出してクスッと笑う。


ツグミはお姉さん肌で、いつでもあたしを引っ張って行ってくれる。


でも……。


あたしは引き出しにしまってあるうそつきペンを思い出していた。